価値が落ちない家づくりを
2021.6.11お金・設計・仕様
欧米諸国では約100年とも言われている住宅寿命ですが、
日本では平均約30年という短さです。
日本では、資産価値のある家という観点で
家づくりを考えることが、一般的ではなかったということです。
この、つくっては壊す、スクラップ&ビルド型の社会から、
いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う、
ストック活用型の社会への転換を目的として、
長期にわたり住み続けられるための措置が講じられた
優良な住宅を普及させるために制定された
「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が
施行されたのは平成21年のことです。
家づくりを考え始めたばかり・・・という方の中にも
「長期優良住宅」っていう名前だけはきいたことがあるという方は
多いのではないでしょうか。
名前はすごく立派ですよね。
こんにちは。三協建設 堀内です。
『長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が
その構造及び設備に講じられた優良な住宅のことです。
長期優良住宅の建築および維持保全の計画を作成して
所管行政庁に申請することで、基準に適合する場合には認定を受けることができます。』
維持保全の計画を作成して・・・とは、
つまり、建てた後に定期的にメンテナンスをしていくことを
前提とした制度ということです。
例えば、劣化対策として、
『住宅の構造躯体が数世代にわたって使用できるよう、
通常の維持管理条件下で少なくとも100年程度使い続けられるような
構造躯体点検のための床下空間や点検口なども設置する。』
=点検できるように準備がしてあるということです。
また、維持管理・更新の容易性として、
『構造躯体に比べて耐用年数が短い内装・設備の維持管理
(清掃・点検・補修・更新)を容易に行えるようにする。』
=補修したり、取り替えたりすることが前提ということです。
維持保全計画として、
『将来を見据えて定期的な点検・補修に関する計画を策定する。』
=立てた計画に沿って、定期的に点検・補修をすることになっているということです。
「長期優良住宅」というラベルがついている家が長持ちするわけではなく
住み始めた後、どんな点検・メンテナンスを行っていくのか?が大切ということですね。
では、少し視点を変えてみましょう。
買ったその時から、家の価値は下がり始めてしまうのが現状です。
中古住宅となると、一般的な市場価格は大幅に下がっていきます。
一戸建て住宅の価格は、日本では一般的には
築20年ほどでゼロになるといわれています。
これは、木造住宅における税法上の耐用年数が
22年と定められているからなので、
もちろん築20年以上の家に価値がないとか、
建物の寿命が尽きたというわけではないんです。
そして一戸建て住宅の価格は土地と建物の合計なので
土地の価格は住宅の築年数とは無関係なので、
たとえ建物の価格が0になっても土地の部分については価格がつきます。
なので、売買されるときはほぼ土地の価格のみとなってしまっているのです。
でも、逆に買う側の立場になって考えてみると
イメージがつくかもしれません。
今、あなたは家の購入を考えていて土地を探しているとします。
建物つきの土地が売りに出されていたとします。
建物は古いようで、どんな手入れがされてきたのか、分かりませんし、
今がどんな状態なのかも分かりません。
その家はいらないから、土地だけ欲しいと思っても
土地の価格にプラスして解体費がかかってきます・・・
売主さんが解体してくれて、更地だったら購入したいと思いませんか?
長い間かけて住宅ローンを支払い、
「資産」を手に入れたはずなのに
売るためにさらに解体しなくてはいけない、
家が「負債」になってしまっていたとしたら・・・。
こんな悲しいことが、今、現実としてあるというのは
これから家を購入したいと思う人が
「この中古住宅だったら、手入れをして住みたい」と思う家が
今の日本には少ないからなのかもしれません。
せっかく「長期優良住宅」というラベルがついていたとしても
第三者に分かるようなメンテナンス履歴が残っていなければ
買い手側に魅力として映らないということになってしまいます。
もし、その中古住宅が
適切なメンテナンスがされていたことが証明されたら・・
価値があると判断され、
もしかしたら、壊さずに少しリフォームをして住んでみたいと
思われるかもしれませんよね。
せっかく大きな住宅ローンを組んでまで手に入れる家です。
住宅ローンを払い終わったときに、
家自体の価値が落ちてしまい
「負債」になってしまうような家ではなく、
ちゃんと「資産」になる家にするためにも、
住んでからの家との付き合い方も考えておかなくてはいけないですね。
では、また。